コナミ・メタルギアソリッド3
「Snake Eater」について
絶対失敗が許されない状況
コナミが世界に誇るクリエイター、小島秀夫監督。彼が監督を務める「メタルギアソリッド」シリーズは前作全世界500万本超を売り上げた、超人気タイトル。当然、今作は絶対失敗が許されない状況でした。
今回のテーマは「007」。時代設定が60年代ということもあり、主題歌には当時のハードボイルドな雰囲気が求められました。当初はお馴染みの某作曲家の方に発注が行っていたのですが、今回の主題歌に強烈なインパクトを求める小島監督としては、なかなか満足のいくものが上がってこない、という現状がありました。
締め切りも近づいた中、たまたまその方のコーディネイトを担当していた私には、何度かの監督とのやり取りの中で、何となく監督の望むものが分かってきたような気がしました。本当に必要なのは、「雰囲気」だけではなく、CFでも使えるような「日本人受けする短く明快なサビ」、またオープニングで使用するため、短くコンパクトにまとまっていること、またむしろ甘いラブソング風の歌詞はゲームの世界観からしてもNGであること、など。
音楽的な部分だけでなく
確かにこの辺りのリクエストを把握するためには、音楽的な部分だけでなく、マーケティング展開や、商品としてのゲームコンテンツの理解が不可欠と言えます。今回のプロジェクトでは、開発段階の最も初期から携われたことで、コンテンツの根幹の部分を十分に理解できたことが大きなメリットとなりました。
主人公が中国人系アメリカ人であり、ゲーム自体も日本発世界向けであることから、単に昔の007を踏襲したような甘い、美しいメロディではMGSのオリジナリティを演出するには乏しいと考えました。アメリカが最も大きな販路であるMGSにとって、メロディの「和的鋭さ、刹那さ」みたいなものが出せれば、非常に強いインパクトが与えられるのでは、と考えたのです。
その意味では、日本人と遺伝子レベルで近いと言われる北欧の人々の音楽、有名なところではBjorkなどがイメージとしては最も近いのではないかと考えました。
そしてそのイメージをベースにしたものから、JPOP的なもの、アメリカ的なものも加え、相当な数に及ぶメロディのサンプルを作り、音響監督にプレゼンを行いました。自分の中で一押しはもちろんファーストテイクでしたが、そのような数多くの可能性を提示できたことで、オリジナルのインパクトの強さを理解して頂くことができたと考えています。
(結局採用されたのはファーストテイクでした)
アレンジの過程
私の出したアレンジは、ブラスをフィーチャーしながらも、もう少し無機的なビートを前に出したものでしたが、レコーディングセッションを先述の作曲家の方のプロデュースのもとLAで行うことは契約上決定していましたので、最終的にはそちらの方のサウンドメイキングに委ねることになりました。
仕上がってきたLAレコーディングは、クオリティ的には素晴らしいものでしたが、ライトなLAテイストが入ってしまっていたのは否めない事実でした。ダークでドロドロしたテイストを求める小島監督の意向からは、それたものが録音として上がってきてしまった、という現実がありました。
限られた状況でも最高のものを
この時点でもうこれ以上かけられる予算は皆無です。私に出来ることは、ミックスの修正、リテイクしかありません。幸い、私はミキシングエンジニアとしての経験がありましたので、mp3とメールでやりとりしながら、ハリウッドのミキサーに小節単位での詳細なリクエストを出しました。もちろんミキサーさんは相当な大物、プライドもあります。それを傷つける訳にはいきませんので、メールの文面には細心の注意を払いました。
ミックスだけで3回のリテイクを経て、何とかLAサウンドを脱出し、インパクトある、強いサウンドへと仕上がっていきました。これは、ゲーム会社勤務で培われた、音楽プロダクションの全プロセスを自ら行うという経験が、非常に生かされた良い例であると言えます。
この仕上がりのディテールは、webでは再現しきれませんので、ぜひCDでお聴きいただければと思っております。
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